BirthControl―女達の戦い―
洋一の様子がおかしくなったのは、決められた排卵日にするようになってから、半年が過ぎた頃だった。


何度、チャレンジしても出来ないことに、百合子が焦っていたせいかもしれない。


愛しているから触れたいとかそういうものは一切なくて、機械のように繰り返される営みに、だんだん嫌気がさしたんだろうか?


百合子に対する態度はその頃から明らかに変わっていった。


排卵日にはきちんと帰っては来るものの、それ以外の日には残業と称して遅くなる毎日。


百合子はもしかしたら洋一は離婚してもいいと思っているんじゃないかと不安を感じるようになっていた。






「百合ちゃん、浮かない顔してどうしたね?」


施設に住む久枝という名の年配の女性が、百合子にそう声をかけてきた。


ここは周りから大きな塀で囲まれてはいるものの、一歩中に入るとそれを隠すように木々が立ち並び、その手前には季節ごとに色とりどりの花が咲き誇っている。


久枝は毎朝、この場所を散歩するのが日課だった。


< 11 / 406 >

この作品をシェア

pagetop