BirthControl―女達の戦い―
ようやく譲の元へ遥香が近付いてきた。


譲は娘の無事を喜びながら、抱き締めんばかりの勢いで、遥香に歩み寄る。


その時、遥香が何かを呟いた気がした。


(なんだろう……?)


そう思いながら耳を澄ませて聞いてみる。


「人殺し……」


一瞬、何かの聞き間違いだと思った。


あまりの衝撃に凍りつきながら、まじまじと娘の顔を見つめる。


少し俯いていた娘の顔が、今度はしっかりと静かな怒りを灯した瞳で、譲を見つめ返す。


それからもう一度、今度ははっきりとした声で、遥香は譲を罵倒した。


「人殺しぃぃ!」


両側から隊員達に支えられた状態から、いきなり譲に掴みかからんばかりの勢いで暴れだす。


譲はこんな娘の姿を見たのは、生まれて初めてだった。


あんなに素直で優しい子だったのに……


何をどう間違えたら、こんな姿になってしまうんだろう?


目の前で起こってる出来事が、どこか現実のものではないような気さえしてくる。


娘は……遥香は……


もう自分の思っている娘ではなくなってしまったんだろうか?


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