BirthControl―女達の戦い―
コツコツと要たちの靴音だけが響いている。


要はそれが逆に不気味だった。


自分が見つかるリスクは少ないかもしれないけれど、同時にこの異様な雰囲気に緊張が走る。


気付くと要の額から汗が一筋流れ落ちた。


丸山に声をかけるのも憚られて、ただ後をついていくことしか出来ないでいる。


ふいに何もない場所で丸山が立ち止まり、壁の方に向き直った。


不思議に思ってよく見ると、壁だと思っていた場所には等間隔にドアが並んでいる。


丸山はそのドアの横に慣れた手付きでIDカードを翳した。


するとドアが横に開き、中は診察室であることがわかった。


きっといつも丸山と遥香が仕事をしているんだろう場所なんだと、要は理解した。


中に入るとようやく張りつめた空気が緩和され、要は大きく息を吐いた。


「先生、遥香の行きそうな場所に心当たりありますか?」


すると丸山はゆっくりと首を横に振ると、申し訳なさそうに口を開いた。


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