BirthControl―女達の戦い―
(どこに行ったんだ……)


操作に夢中で全く気付かなかった。


辺りを見回すとA棟に続く廊下に血の後が点々とついている。


(まさか……さっきの会話を聞かれていたんじゃ……)


慌てて追いかけるが、青柳は見当たらない。


血の後は廊下からエレベーターへと続いていた。


心臓の音がドクドクと早くなる。


そこで初めて自分が風呂場の場所を知らなかったことに気付いた。


誰かに聞くことも出来ない。


要はもう一度梨央を呼び出し、事情を伝えた。


「青柳は遥香の元に向かった可能性が高い

遥香にそれを伝えてくれ」


どこだかわからない場所をグルグル回りながら、要は自分のバカさ加減を呪う。


とにかく血の後だけが頼りだった。


これだけの血が流れているのだから、重傷には違いないはずなのに……


青柳のどこにそんな力が残っているというのか……


その時――


何かが弾けたような乾いた音が響いた。


要はその音のする方へと走り出す。


もう誰に見られたって構わなかった。


誰もいなかった廊下に、ポツポツと人が現れる。


誰もが要を訝しげに眺めながら、でも誰一人として声をかけるものはいなかった。


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