BirthControl―女達の戦い―
外界から遮断されたこの施設では、今外で何が起こっているかなど知らなくて当然だ。


譲は悟られないよう、勤めて冷静に話題を変える。


「青柳はどうした?」


やはり顔を見せない青柳に苛立ちながら、スタッフにそう聞いてみた。


「はっ、連絡が取れず、今スタッフの者を部屋に様子を見に行かせております」


「そうか……

とりあえず私もそちらに向かう

案内しろ」


「かしこまりました

それではこちらにどうぞ」


先に歩くスタッフの後をついて、夏木と共に歩みを進める。


勝手に行動できない立場が、今はとても歯痒かった。


青柳が裏切る可能性もゼロではないし、遥香のことも気にかかる。


譲がこの施設に足を踏み入れるのは、これが三度目だった。


一度目はまだ稲田が厚生労働大臣だった頃……


二度目は自分が大臣になった時だ。


視察という名目で、一応内部の様子を確認しておきたかったのと、青柳に改めてこれからのことを頼むためだった。


あの頃の青柳は自分の仕事に疑問も持たず、誇りにさえ感じていたように思う。


けれどここ最近は譲に楯突いてくることもしばしばあった。


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