BirthControl―女達の戦い―
最初の部屋にまで運んだものの、このままで大浴場まで行くには目立ちすぎる。


丸山と遥香はしばらく考えた後、ストレッチャーに乗せて運ぶことにした。


確か診察室にあったはずだ。


ここから診察室まではそれほど遠くない。


「先生、私取ってきます!」


遥香は診察室に急ぐとストレッチャーを久枝のいる部屋まで運んだ。


幸い、まだ誰にも目撃されていない。


久枝をゆっくり丁寧にストレッチャーに寝かせると、一緒に持ってきた毛布をかける。


丸山と前後に立ち、怪しまれないよう冷静に、かつ迅速にそれを風呂場へと移動させた。


時々見知った顔とすれ違うたび、遥香は寿命が縮む思いだった。


けれど二人とも医者と看護師という立場上、誰かが急病でそれを運んでいるようにしか見えなかったようだ。


声をかけられても、頭から被せられた毛布を捲るものなどいるはずもなく、丸山が適当にかわす返事にも疑いをもつものなどいなかった。


風呂場について二人がかりで久枝を抱き上げると、浴槽に急ぐ。


何も入っていない空の浴槽に久枝を横たわらせると、そのまま要が戻るのを待った。


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