BirthControl―女達の戦い―
裕之はのそのそと立ち上がり、彼女の目をじっと見つめながら言った。


「礼子ちゃん……

さっきの男性のこと好きなのかい?」


「……好き?」


彼女はそう言って少し考えるような素振りを見せると、ようやく答えを出せたのか、首を傾げながら言った。


「好き……と言えば好きなのかな?

でも愛してる訳じゃないです

彼が奥さんとの間に子供ができなくて、おまけにリストラにあって落ち込んでた時に、私に会いに来て……

必要とされることが嬉しくて……

見た目も悪くなかったし、今まで私が相手した誰よりも若かったから……

この人と家庭を作れたらって思っただけで……」


礼子はフッと笑って、おかしいですよね?と言いながら、裕之に答えを求めるような、すがるようなそんな目で見てくる。


「それじゃあ、あの彼は結婚してるのか……」


たぶんそれは、彼女の求める答えでも、言われたい言葉でもなくて……


つい不倫であるかのような、責めるような口調になってしまったことに、ハッとした。


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