BirthControl―女達の戦い―
その瞬間、ずっと悲しい笑みを浮かべていた彼女の顔が、初めて歪んだ。


また傷付けてしまっただろうか?


だけど、今のまま疑似的な夫婦を続けていけば、その先に礼子がもっと傷付くのは目に見えていた。


せめて……


あの時の償いをする意味でも、大人として助言してやりたいと思った。


例え嫌われても……恨まれても……


彼女をこれ以上不幸にしたくない。


今にも泣き出しそうな彼女の胸に、少しでも自分の言葉が残ってくれたらいいと裕之は思う。


「礼子ちゃんは今までとても苦労してきた……

だからこそ、これからは幸せになるべきだと思う

いや、幸せになってほしい

もしかしたら、これから世の中がが変わるかもしれない時に、選択を間違ってほしくないんだよ」


裕之がそう言うと、我慢しきれなかったように、礼子の頬を大粒の涙が流れて落ちた。


「世の中……変わるんですか……?

私みたいな思いをする女性が……いなくなる世の中に?」


「それは……わからないけど……

でも今、何かが変わろうとしていることは確かだ……」


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