BirthControl―女達の戦い―
礼子が初めて男を受け入れたのは、19歳の夏だった。
自宅の自分の部屋で寝ていると、なんだか体に違和感を覚えたのだ。
なんだろうとそっと目を開けてみると、男が礼子の体の上にに馬乗りになっている。
抵抗しようとしたけれど、意識が朦朧としていて体がいうことをきかなかった。
体を這う男の指や舌に、開かれていく体。
気持ち悪いのに、結局、礼子はされるがままになるしかなかった。
愛とか恋とかそういうものは何もない、ただの性の捌け口となったこの瞬間が、礼子の初めてだった。
全てが終わると男はそっと礼子の髪を撫でながら「よかったよ」と興奮した声で言った。
何がよかったなのか、礼子にはわからなかった。
それにその声には聞き覚えがあった。
暗闇でよくわからなかったけれど、近所に住む父の釣り仲間の一人によく似ている。
男は礼子の髪を撫でながら、キスをしようと顔を近づけてきた。
さっきよりははっきりしてきた意識が、それを激しく拒絶する。
「いやあぁぁぁ!!
お父ーさん!お母ーさん!」
泣きながらありったけの声で叫んだつもりだった。
けれど何故かうまく口が回らない。
それでも男は慌てたように自分の手で、礼子の口を塞いだ。