BirthControl―女達の戦い―
それがどういう意味なのかなんて考える余裕もなかった。


洋一はただ受け入れてくれた嬉しさに震え、礼子の体に舌を這わせていく。


考え直してくれたんだと思った。


やっぱり洋一の体を忘れられないんだと。


だから……


洋一はまだここにいていいよって言われた気がして、嬉しくて嬉しくて、夢中で礼子の体に没頭したんだ。













……でも違った。


事が済んでまだ、息を弾ませている洋一に礼子が放った言葉は、無情にも冷たく醒めきった言葉だった。


「気が済んだ?」


感じてなんかいなかった。


喜んでなどいなかった。


ただ、最後に洋一の気が済むまで抱かれただけ……


そんな現実が洋一を打ち砕いたとき、残ったのは虚しさと……


深い悲しみだけだった。


ゆっくり立ち上がり、衣服を整える。


洋一は礼子を見ることなく、約半年お世話になったこの部屋を後にした。


着の身着のままで出て来たことに気付いたのは、店の前を通りすぎようとしたときだった。


そう思ってすぐに、自分の荷物など大してなかったんだと苦笑いする。


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