BirthControl―女達の戦い―
いつの間にか雨は止んでいた。


あちこち出来た水溜まりを、わざと踏んでバシャッと音をさせる。


ズボンに水がかかることなどお構いなしに、歩くたびに現れる水溜まりを踏みしめた。


濡れた足が外気にさらされて、どんどん冷たくなっていく。


このまま……


消えてしまいたかった。


住む家も、働く場所もないまま放り出されて、これからどう生きていけというのだろう?


膝から崩れ落ち、その場にうずくまると、ようやく涙が溢れてきた。


捨てられた自分になのか、情けない自分になのか……


涙の意味はわからなかったけれど。


(百合子……)


思い出すのは礼子じゃなく百合子の顔。


あんなに自分を愛してくれていたのに、なんてことをしてしまったんだろうと今さらながらに思う。


まだ間に合うだろうか?


離婚が成立してしまった今、戻ってきてくれとは言えない。


許してくれるとは思えないけれど、もし許してくれるなら、今度こそ大事にしてやりたいと思う。


子供が出来ない原因は自分にあると、礼子を見ていて薄々は感づいていた。


だから、余計に百合子には申し訳ないことをしたと思う。


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