BirthControl―女達の戦い―
久しぶりに百合子に会えるかもしれない。


はやる気持ちを抑えながら、洋一は団地の階段を急ぐ。


ようやく玄関の前までやってきた時、急に怖くなった。


もし、受け入れてもらえなかったら……


いや、でもあんなに愛してくれてたんだ。


洋一がきちんと謝ってやり直したいと言えば、百合子はうんと言ってくれるんじゃないだろうか?


そんな甘い考えでドアの前に立ち、ゆっくりとチャイムを押す。


ピンポーンと間延びしたような音がドアのこちら側にも聞こえた。


しばらく待ったけれど、百合子が出てくる様子はない。


(こんな時間にどこに行ったんだろう?)


洋一は万が一にも百合子がここからいなくなっていることなど、信じて疑わなかった。


だから何度もチャイムを押してみる。


寝てるのかもしれない……


風呂に入ってるのかもしれない……


そんな風にいろんな可能性を考えながら……


何度チャイムを押しても出てこないことに、洋一は焦りを感じ始めた。


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