BirthControl―女達の戦い―
「百合ちゃん」


そう声をかけられて振り返った。


「梨央さん!」


そこには白衣を羽織って、にこにことこちらを見ながら立っている梨央がいた。


「朝の体操は終わったんですか?」


最近、丸山の提案で始められた体操は、お年寄りたちにも評判がいい。


梨央はそれを毎朝の日課にしたのだった。


「今、終わったとこ

汗かいちゃった

それより百合ちゃん、あの男どう?」


洋一がここで働くようになって、もうずいぶん経つというのに、梨央は会うたび心配してくれる。


「大丈夫です

もう私とより戻そうとか思ってないと思いますよ?

仕事にも慣れたみたいだし、最近はおばあちゃんたちから人気みたいで……ふふっ」


男性のスタッフが少ないこの施設では、洋一のような若い男性は珍しい。

だから余計に可愛がられるのかもしれない。


最初は戸惑っていた洋一も、最近では嬉しそうに相手をしている。


「そっか、ならいんだけどね?

百合ちゃんに頼まれてあの男をここで働かせたのはいいけど、百合ちゃんに何かあったら大変だからさ」


「ありがとうございます
その節は無理いってすみませんでした……」


< 403 / 406 >

この作品をシェア

pagetop