BirthControl―女達の戦い―
「いいの、いいの

百合ちゃんにひどいことした奴だから、説教でもしてやろうかと思ったんだけどね?

大丈夫なら良かった

じゃ、そろそろ皆のとこ回ってくるね?」


そう言って手をひらひら振りながら、梨央は廊下の向こうへと歩いていった。


住人たちとのコミュニケーションは梨央にとって一番大事にしている仕事以上のものだ。


梨央の背中を見送りながら、百合子は今の幸せを噛み締める。


日本はまだまだ貧しいままだ。


だけど、その先にある希望が見えた時、人は頑張れる。


先の見えない不安と闘っていたあの頃とは、貧しさは同じでも雲泥の差だ。


お年寄りは皆、OldHomeに怯えずに済んだし、子供がいない夫婦も惨めな思いをしなくて済む。


一時期、少子化対策支援法が廃止になり、激減するかと思われた出生率も思ったほどではなかった。


家におじいちゃんおばあちゃんがいるおかげで子供を預けて働くお母さんも増え、落ち込むかと思われた経済も廃止前と比べてそれほどの差も出なかった。


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