BirthControl―女達の戦い―
母は礼子からそっと視線を外して、慌てたようにこう言ったのだ。


「礼子ちゃん、仕方ないのよ……

家計を助けるためだと思ってお父さんに協力してくれないかしら?

私も体が弱いから働くことも出来ないし……

この方法が一番いいんじゃないかって、お父さんと話して決めたの

あなたにはちょっと辛い思いさせちゃうけど、子供を生んでくれれば解放してあげるから

ね?お父さんとお母さんを助けてくれるわよね?」


信じられなかった。母もグルだったのだ。


(ちょっと辛い思いをさせるですって?)


好きでもない男に初めてを奪われることが、ちょっと辛いくらいのことだと本気で思っているんだろうか?


今、思えば……


昨晩も薬を盛られたのかもしれないと思った。


あの異常なまでの眠気と怠さは普通じゃない。


礼子の怒りは絶望に代わり、もう何も考えたくなかった。


考えてしまえば、自分が壊れてしまうとわかっていたから……


今まで育ててくれた恩はこれで全て消えてなくなっただろう。


礼子はそう思うことで、自分の全ての感情を遮断した。


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