Over Line~君と出会うために
「どうした、貴樹。いつになく緊張しているのか?」
 からかいの混じったそれに、貴樹は一瞬押し黙る。
いつになく緊張していることは自分でもわかっていて、それが、会場に来ている彩の存在のせいだということも、わかっていた。
「うん、すっごいしてる」
「お前、舞台度胸だけはあるのになぁ。どうせ、そんな緊張なんかライブが始まったら吹っ飛ぶだろ。いつものように全力で突っ走って、気がついたら舞台袖でぶっ倒れているってパターン。ま、俺らもその方がやりがいあって楽しいけどね。しおれたお前なんぞつまらん」
「……来ている、から」
「何?」
「彼女。きっと、来ている」
「へえ」
 と、沢口は驚いたように声を上げた。
 貴樹のある意味での純愛話は既にこのメンバー内では有名なものになっていて、沢口も大体の事情は把握している。驚いたものの、興味深そうに聞き返してきた。
「ついに、話したわけか?」
「……言ってないけど」
「はあ?」
 貴樹の答えに、沢口は目をまるくした。
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