Over Line~君と出会うために
 何故なら、貴樹は、そうして歌うことしかできないからだ。歌うことで何かを得ようとしている自分を否定することは、不可能だから。
 だから、全てを見せようと思う。言葉で説明するのではなく、実際に見てもらいたい。理解して欲しい。そして、自分の全ては歌にして返す。彩だけにではなくて、この会場にいる全ての人と、自分の歌を聴いてくれる全ての人に。
 ライブの開始を告げる、カウント・ダウンが始まる。
 所定の位置に立ち、深呼吸をして、目を閉じる。ゆっくりと、その瞬間を待った。
 そして、カウントがゼロを刻む。
 貴樹は深く息を吸って、そして、力の限りに叫ぶ。
「Welcome to REAL MODE!!」
 歓声が、聞こえる。至福の時間が始まる。
 客席と交差する、視線。絡み合う一瞬の眼差しに、答えを見つけた気がした。
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