Over Line~君と出会うために
「三枝彩さん?」
 不意に名前を呼ばれたことで、彩は驚いて飛び上がるようにして振り返る。こんな場所に知り合いがいるとは思いもしなかったのだから、当然の反応だった。
 そこにいたのは、長身の青年だった。彩は知らない顔だと咄嗟に思ったが、どこかで会ったような気もする。だが、それがどこでなのかは思い出せなかった。
 誰だろう? と考えていると、彼は、彩が手にしているアンケート用紙をちらりと見やって、わずかに微笑んだ。
「もしかして、そのまま帰ってしまうつもりですか?」
「そのつもり……ですけど……?」
「せっかく来てくれたんでしょう? アンケートにまで記入して下さるなんて、嬉しいですね。どうせ来ていただいているんですから、あいつに会って行って下さってもいいのではありませんか?」
 そう言われて、思い出した。
 この青年は、貴樹の関係者だ。こっそりと羽田空港に行った時、貴樹の傍にこの人がいた。貴樹はこの人ととても親密そうに話していたように思う。
「……でも」
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