Over Line~君と出会うために
 きっと、それは、魔法の言葉。貴樹が、何よりも待ち望んでいた言葉だった。
 こだわっていたことも、怖いと思っていたことも、漠然とした不安も、彩のたった一言で全てが消えて行く。そう思った。
 前のようにREAL MODEの東城貴樹を否定されてしまうのが嫌で、それが原因で彼女が離れて行ってしまったらと考えるのも怖くて、ずっと、言い出せずにいた。
 前の恋人と彩とは違う。それはわかってはいても、一度傷つけられた痛みは自分で考えている以上に厄介で、どうしようもなかったのだ。
 けれど。
「彩……!」
「ところで」
「えっ」
「この前、空港で見かけたんだけど。あの、高校生のような女の子たちを侍らせていたのは、一体何?」
「……は?」
 全く身に覚えのない『侍らせる』という言葉に、貴樹は固まる。
「追っかけのことじゃないのか?」
 天宮が事も無げに言い放ち、そこでようやく思い当たった事実に貴樹は青ざめた。
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