Over Line~君と出会うために
「あれ、彩。何だか楽しそうだね」
大輔から仕事で近くに来たから一緒に食事をしようとメールがあって、彩は二つ返事で了承した。
特に用事がなければ、大輔からの誘いを断ることはない。大輔との会話での話題が本当の意味で噛み合うことはほとんどないのだが、それでも、気心の知れた友人である事実には変わりはない。それに、お互いに実家から離れている身としては、何となく大輔との仲を疎遠にはしたくないという感情があるのだ。
それに、大輔に会ったらちょっとだけ頼みたいことがあった、というのもある。
先日、貴樹と初めて食事に言った時に、彼が口を滑らせた「サインがもらえないか」という台詞を、彩は覚えていたからだ。
待ち合わせ場所に入って来るなり、大輔は彩を楽しそうだと評した。自分ではそのつもりはないのだが、そんなに楽しそうに見えるのだろうか。
「そう見える?」
「うん、見える。彩のそういう感じ、久々に見たかも」
そう言いながら大輔は彩の向かいに腰を下ろし、注文を取りに来た店員にちょっと待って、と声をかけた。
「彩はごはん食べた?」
「ううん、大輔が来てから決めようかと思って」
「ごめん、誘ったくせに遅れて」
「大丈夫、そんなに待ってないし」
「ふうん……まあ、それならいいけど」
大輔はメニューを開いてひとしきり悩んでから再びウェイトレスを呼び、注文を告げる。彩も同じように注文すると、大輔は一息ついて水を一気に飲み干した。
「……相変わらず食べるねぇ」
「んー、ここ数日、家に籠もってたからさ。今朝納品したばっかで、ろくなもん食ってなかった」
「それって、例のスイート何とかってアニメの仕事?」
「それもあるけど、何、彩も興味持ってくれたの!?」
見当違いのことで目を輝かせた大輔に、彩は溜め息をつく。
「そうじゃないってば。まあ、興味があるってのは、完全な間違いってわけでもないのかもしれないけど……」
興味があるのは、スイート何とかを好きだと言っている『東城貴樹』という存在に対して、だ。その興味がどういう名前のつくものなのか、彩自身、自分の感情をきちんと把握してはいなかった。
大輔から仕事で近くに来たから一緒に食事をしようとメールがあって、彩は二つ返事で了承した。
特に用事がなければ、大輔からの誘いを断ることはない。大輔との会話での話題が本当の意味で噛み合うことはほとんどないのだが、それでも、気心の知れた友人である事実には変わりはない。それに、お互いに実家から離れている身としては、何となく大輔との仲を疎遠にはしたくないという感情があるのだ。
それに、大輔に会ったらちょっとだけ頼みたいことがあった、というのもある。
先日、貴樹と初めて食事に言った時に、彼が口を滑らせた「サインがもらえないか」という台詞を、彩は覚えていたからだ。
待ち合わせ場所に入って来るなり、大輔は彩を楽しそうだと評した。自分ではそのつもりはないのだが、そんなに楽しそうに見えるのだろうか。
「そう見える?」
「うん、見える。彩のそういう感じ、久々に見たかも」
そう言いながら大輔は彩の向かいに腰を下ろし、注文を取りに来た店員にちょっと待って、と声をかけた。
「彩はごはん食べた?」
「ううん、大輔が来てから決めようかと思って」
「ごめん、誘ったくせに遅れて」
「大丈夫、そんなに待ってないし」
「ふうん……まあ、それならいいけど」
大輔はメニューを開いてひとしきり悩んでから再びウェイトレスを呼び、注文を告げる。彩も同じように注文すると、大輔は一息ついて水を一気に飲み干した。
「……相変わらず食べるねぇ」
「んー、ここ数日、家に籠もってたからさ。今朝納品したばっかで、ろくなもん食ってなかった」
「それって、例のスイート何とかってアニメの仕事?」
「それもあるけど、何、彩も興味持ってくれたの!?」
見当違いのことで目を輝かせた大輔に、彩は溜め息をつく。
「そうじゃないってば。まあ、興味があるってのは、完全な間違いってわけでもないのかもしれないけど……」
興味があるのは、スイート何とかを好きだと言っている『東城貴樹』という存在に対して、だ。その興味がどういう名前のつくものなのか、彩自身、自分の感情をきちんと把握してはいなかった。