Over Line~君と出会うために
「オトコか?」
 にやにやと笑いながら、大輔が聞く。
「何でそうなるの」
「だって、彩は俺の仕事になんか欠片も興味ないだろ」
「う……」
 それは事実なので、言い返せない。彩は目を泳がせ、次の言葉を探す。
「でも、別に、右から左に聞き流しているわけじゃないけど」
「そんなのわかってるよ。でなけりゃ、俺と幼馴染してないと思うし。……で」
 そう言って、大輔はにやりと笑った。
「スイートキューティに興味があるってことは、そいつもオタクか?」
「たぶん……」
「たぶんって、何じゃそりゃ」
「だって、知り合ったばかりだし、よくわからないんだよね。でも、あんたの絵が好きなのは本当だと思う」
「……ちょっと待て。そもそも、オタクのそいつと彩が知り合うきっかけってのが思いつかないんだが」
 大輔の中では、まだ見ぬ貴樹は勝手にオタク認定されたらしく、大輔は首をひねった。
「まあ、俺の絵を好きだって言ってくれてるのは歓迎なんだが……」
「本当に偶然なんだよ。だから、自分でもわけわかんない。偶然だし、その上失礼だし、でも……」
「運命の出会いだと感じてしまうくらいにときめいた?」
「そ、そんなわけないでしょ!」
 その時、彩の携帯がメールの着信を知らせる。大輔に一言断って画面を見れば、相手は貴樹だった。
 内容は前回のお礼と、また機会があったら会いたいという簡単なメールだった。たったそれだけのことなのに、何故か、妙に浮き足立った気持ちに襲われる。
 携帯を閉じた彩は、目の前の大輔がニヤニヤしてこちらを見ているのに気づいて彼を睨んだ。
「何よ」
「……いや、嬉しそうだな、と思って」
「そんなこと」
「あるよ」
 と、大輔は彩の言葉を遮る。それから、顎に右手を当てて少し考え込むようにし、にんまりと笑う。
「ちょっと、幼馴染としては、そいつのことが気になるなぁ。んじゃ、そいつに会う口実を俺が作ってやろうか」
< 14 / 119 >

この作品をシェア

pagetop