Over Line~君と出会うために
そうして、互いに積極的なコンタクトを取るということもなく、日々は過ぎて行った。
そうなると却って連絡しづらくなるというもので、ツアー前の忙しさもあって、貴樹はますますコンタクトを取るのに躊躇するようになってしまっていた。時間が空けば空くほどぎこちなくなるだろうことはわかってはいても、いざ携帯を手にするとどうしても先に進めない。
そんな、ある日のこと。
今日は外での撮影なんだよなーなどと思いながら、寝ぼけ眼でのろのろと着替えていた貴樹は、いきなり鳴り響いた携帯の着信音にびくっと身体を震わせた。慌てて取り上げてみると、相手はマネージャーの栗原だ。
「もしもーし」
「あ、東城くん?」
「ふぁい」
手近にあった携帯補助食品の封を切って、口に放り込んでもぐもぐさせながら応答する。行儀が悪いのはわかっているが、時間がないし食事をするのも面倒だから仕方がない。
電話の向こうの栗原は、そんなことを気にした様子もなく、いつものようにきびきびと用件を告げた。
「今日の撮影、中止になったから。それで、オフにするから、今日は一日ゆっくりと休んでいいわよ」
「えっ、何で中止?」
「外、見てないの? 雨、降ってるのよ。残念ながら、野外での撮影はできないわね」
そう言われて、貴樹は起きてから初めてカーテンを開けた。そうして、窓の外が完全に濡れそぼっていることを知る。
そうなると却って連絡しづらくなるというもので、ツアー前の忙しさもあって、貴樹はますますコンタクトを取るのに躊躇するようになってしまっていた。時間が空けば空くほどぎこちなくなるだろうことはわかってはいても、いざ携帯を手にするとどうしても先に進めない。
そんな、ある日のこと。
今日は外での撮影なんだよなーなどと思いながら、寝ぼけ眼でのろのろと着替えていた貴樹は、いきなり鳴り響いた携帯の着信音にびくっと身体を震わせた。慌てて取り上げてみると、相手はマネージャーの栗原だ。
「もしもーし」
「あ、東城くん?」
「ふぁい」
手近にあった携帯補助食品の封を切って、口に放り込んでもぐもぐさせながら応答する。行儀が悪いのはわかっているが、時間がないし食事をするのも面倒だから仕方がない。
電話の向こうの栗原は、そんなことを気にした様子もなく、いつものようにきびきびと用件を告げた。
「今日の撮影、中止になったから。それで、オフにするから、今日は一日ゆっくりと休んでいいわよ」
「えっ、何で中止?」
「外、見てないの? 雨、降ってるのよ。残念ながら、野外での撮影はできないわね」
そう言われて、貴樹は起きてから初めてカーテンを開けた。そうして、窓の外が完全に濡れそぼっていることを知る。