Over Line~君と出会うために
「あのっ、東城貴樹さんですよね。REAL MODEの」
「違います」
間髪入れずに、即答する。
少女たちは顔を見合わせ、更に言い募った。
「え、でも」
「迷惑なんだよね。よく似ているって言われるからさ。君たちみたいに、図々しく声をかけてくるのがたくさんいるし」
「……えっ、あ、あの、ご、ごめんなさい……」
瞬間、泣きそうになった彼女に、ほんの少しだけ良心が痛んだ。これが、彩と一緒の時でなかったとしたら、もう少し優しく断れたのかもしれない。断らずとも、にっこり笑ってサインの一枚くらい書いてあげて、本当はプライベートの時にこういうことはしないで欲しいんだって、優しく怒って釘を刺して。
だって、彼女たちは性質の悪い追っかけ行為をしたわけではないし、たまたま見かけて声をかけてしまっただけの、一般の人だと思うから。
だけど。
今は、貴樹はそんなふうに思える余裕がなかった。自分でもおかしいと思うくらいに、他人を思いやれる余裕がなくなっていたのだ。
彩に自分のことを知られたくない。その気持ちだけが先走ってしまって、そのことしか考えられなくなっていた。
貴樹に冷たくあしらわれて泣きそうになって去っていく二人組を見送っていると、ようやく会計を終えたらしい彩が店から出てきた。
「……どうかしたの? 知り合いでもいた?」
「ううん、別に。人違いされただけ。それよりさ、お腹空かない? 早くご飯食べに行こうよ」
ここには個室があるような高級なレストランはなかったから、テイクアウトで車の中で食べるか、それとも、移動するか。どっちがいいかなーなんて考えながら、貴樹は戸惑う彩を促して歩き出した。
「違います」
間髪入れずに、即答する。
少女たちは顔を見合わせ、更に言い募った。
「え、でも」
「迷惑なんだよね。よく似ているって言われるからさ。君たちみたいに、図々しく声をかけてくるのがたくさんいるし」
「……えっ、あ、あの、ご、ごめんなさい……」
瞬間、泣きそうになった彼女に、ほんの少しだけ良心が痛んだ。これが、彩と一緒の時でなかったとしたら、もう少し優しく断れたのかもしれない。断らずとも、にっこり笑ってサインの一枚くらい書いてあげて、本当はプライベートの時にこういうことはしないで欲しいんだって、優しく怒って釘を刺して。
だって、彼女たちは性質の悪い追っかけ行為をしたわけではないし、たまたま見かけて声をかけてしまっただけの、一般の人だと思うから。
だけど。
今は、貴樹はそんなふうに思える余裕がなかった。自分でもおかしいと思うくらいに、他人を思いやれる余裕がなくなっていたのだ。
彩に自分のことを知られたくない。その気持ちだけが先走ってしまって、そのことしか考えられなくなっていた。
貴樹に冷たくあしらわれて泣きそうになって去っていく二人組を見送っていると、ようやく会計を終えたらしい彩が店から出てきた。
「……どうかしたの? 知り合いでもいた?」
「ううん、別に。人違いされただけ。それよりさ、お腹空かない? 早くご飯食べに行こうよ」
ここには個室があるような高級なレストランはなかったから、テイクアウトで車の中で食べるか、それとも、移動するか。どっちがいいかなーなんて考えながら、貴樹は戸惑う彩を促して歩き出した。