理想の恋愛関係
優斗君との関係は順調だった。


形になる進展は無いし、付き合うとかそんな話は全く出ないけど、でも時々、優斗君の方から電話をくれるようになった。


それも特に用が無くてもかけてくれる。


メールもくれる。


気にかけてくれていると思うと、嬉しくて仕方なかった。


上手く行き過ぎて、怖いくらいだった。


そんなある日。

事務所で事務作業をしていると、


「ねえ緑。夕方、龍也が来るから」


外出から帰って来た鈴香が告げて来た。


「ふーん……え……龍也?」


苦手な事務作業中だったせいか、危うく聞き逃しそうになった。


「どうして、龍也が来るの?!」


有り得ない話に、興奮気味に鈴香に詰め寄る。


鈴香は私とは正反対に落ち着き払って答えた。


「龍也から電話が来たの。仕事を頼みたいって」

「え、仕事?」

「そう。緑に連絡がつかないから、私に電話して来たみたいよ。
以前名刺交換してたからね」

「それで、何で事務所まで来るの?! 断ったんでしょ?」


言い募ると、鈴香は眉をひそめて私を見た。


「断る訳ないでしょ? 打ち合わせに来たいって言うから、お待ちしていますって言ったけど」

「な、何で? よりによって龍也の仕事なんて……鈴香だって龍也の事嫌がってたじゃない」


「龍也の仕事だろうが、新規顧客獲得のチャンスに変わりはないでしょ? 向こうから来てくれたものを断る方が馬鹿だわ」


そ、それはそうだけど。


流石はドライな鈴香。
見事な割り切り。


「私が担当するから、緑は手伝う程度でいいわ」

「うん……」

「でも、今後も私の客にするからね」

「……はい」


本当にしっかりしている。


それにしても、嫌な予感しかしなかった。

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