ナギとイザナギ
 しかし、僕たちが例の像をイザナギさんに見せると、イザナギさんは押し黙ってしまったんだ。
 僕とさぎりは顔を見合わせてしまっていた。
「これは俺に預けてくれぬか」
 イザナギさんはその像を懐にしまった。
「どうするつもりなの」
「これはこのまま持っていてはいけない。さぎりに限らず、持っていると災いを呼び寄せてしまうものなのだ。だいじょうぶ、早めにかたをつけるから」
 そうはいっても、それいちおう、拾得物なんですけど。
「ううむ、ナギは理屈やだからな。いいか。これは、人間の問題ではなくなってしまったのだ。俺に考えがある。まかせてはくれんか」
「うん。私はかまわないわ。イザナギさんにまかせる」
「さ、さぎりっ」
 にこにこしながら答えるさぎりに、僕は呆れるしかなかった。
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