その指に触れて
遥斗と晃彦のことは、お互いに知られたくなかった。


くそっ、あたしのばか。


「あれだよな、遥斗って奴、メガネかけてていかにも弱々しいって感じの奴だよな」

「そうよ、あんたとはまるっきり違うから」


あたしは強気で言い返す。ここで弱気になったら負けだ。


「あんな奴のどこがいいの? 万梨子、お前頭おかしくなった?」

「どうとでも言いなさいよ。晃彦を好きになることは今後一切ないから」

「頭だけだろ、あんな奴。男じゃねーよ」

「あたしが誰を好きになろうと勝手でしょ。少なくとも遥斗はあんたよりずっといい奴だから。あんたに遥斗をバカにする筋合いなんてない」

「体はこんなに正直なのに」


背中が壁に当たる。前には晃彦、後ろは壁。頭上には小さな窓。


あたしが窓に手を伸ばすと、容易く晃彦にその腕を捕まれた。


「無駄な抵抗はしない方がいいよ。それにこの窓、万梨子が通れるほどの大きさないしね」


わかっていた。わかっていたのに手を伸ばした。


少しでもわずかな望みが欲しかっただけだ。


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