この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
顔をしかめながら視線を上に向けると見たことも無い男性が胸を押さえて立っていた。
赤茶けた少しウエーブのかかった髪。彫りの深い顔にブルーの瞳。外人か?
銀に負けないくらいの男前だ。
平凡を絵に描いた様な日本人の私。外人には、めっぽう弱い。
ホントは尾てい骨が死ぬほど痛いにもかかわらず、引きつった愛想笑いを浮かべ「ハ、ハロー……あぁ~、アイムソーリー」とか言っちゃってる。
すると赤毛の外人が怪訝な顔をして私に近づいて来た。
「何が"ハロー"だ」
あれ? 日本語?
「俺は日本人だよ。それより、大丈夫か? 足でもひねったか?」
そう言いながら私の足首を覗き込む。
「ち、ちが……う」
「はぁ? 違う? じゃあ、どこだ? 腰か? もしかして首をやったか?」
「うぅぅ……違う。お、お尻……」
「ぶほっ! ケツ打ったってか? ヒャヒャヒャ~」
なんちゅー失礼なヤツ! 銀といい勝負しそうだ。
てか、そんなこと考えてる場合じゃない。立とうと思っても力を入れると激痛が走って身動きが取れない。
「なんだ、立てないのか?」
涙目でコクリと頷くとその赤毛さんがクルリと向きを変え私に背を向けた。
「おぶされ」
「はぁ?」
「立てないなら仕方ないだろ? 医務室に連れてってやるよ。なんなら、抱っこでもいいけど?」
だ、抱っこ? それ絶対無理!
仕方なく彼の背中におぶさり医務室に連れてってもらうことにした。途中、多くの社員が振り返って私たちをガン見する。
恥ずかしい。この年になって公衆の面前でこんな姿をさらすとは……
それも社内で……
なのに、この人ったらお気楽に鼻歌なんか歌っちゃってる。
私はというと、他の社員に正体を知られたくなくて、彼の背中に顔を埋め尾てい骨の痛みに耐えていた。
「ほら、着いたぞ」
医務室のドアを乱暴に開け、ズカズカと中に入ってく男性。
「負傷者ひとり、頼んます!」