この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「痛ってぇ~何すんだよ!」
「下ネタしか話すことないんですか?」
「んん~っ……下ネタって、楽しくねぇ? 桃尻ちゃんも嫌いじゃないだろ?」
「興味ないです!」
とは、言ったものの、嫌いなワケないじゃん! むしろ大好き。
「な~んだ。つまんねぇー」
頭をポリポリ掻きながら戻って行く赤毛さんの後姿に向かって、私は心の中で叫んでいた。
『仕方ないから教えてやろう! 銀のナニは超ビックだよ! ざまぁーみろ!』
何が"ざまぁーみろ!"かは定かではないが、私は勝ち誇った様に第2フロアを後にする。
自分のオフィスに戻り、なんとかその日のノルマを終えると、ちようど定時。
銀は営業に出ていて、今日は直帰らしいし。この前、お世話になった医務室のおばあちゃんに挨拶でもと思い廊下を歩いていたら、トイレから出て来た橋倉さんとバッタリ遭遇。
「今、帰りっすか?」
「ええ、神埼さんはどこ行くの?」
「私は医務室にちょっと……」
何気ない会話をしながら給湯室の前を通り掛った時だった。
給湯室の中から「橋倉さんってね……」と言う声がして、どちらともなく足を止める。
私達がここに居ることなど知らぬ若い女性社員が、廊下まで丸聞こえの甲高い声で話し出す。
「ねぇ、あのお局の橋倉さん、沢村部長に本気なのかな?」
「本気に決まってるよ! 毎日1時間掛けて、あのケバいメークしてくるのは部長の為らしいよ」
「やだぁー! 超キモいんだけど~大体、部長が橋倉さんみたいなオバさん相手にするワケないのにね」
「そうそう、自分が分かってないのよ。だからオバさんは困るのよね~。でも何にも知らずに頑張ってる橋倉さんって、ミジメだよね~」
酷い……確かに、私も橋倉さんのメークはケバいと思う。でも、橋倉さんが誰を好きになるかは彼女の自由だ。それを面白おかしくバカにて笑うなんて許せない。
怒りに震える私の横で、橋倉さんが唇を噛み、下を向く。
そんな橋倉さんの姿を見て、私の怒りが頂点に達したんだ。
「ちょっと、アンタたち、いい加減にしなさいよね!」