この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
あぁ……だから横田さんは初めて会った時、美衣芽って名前は本名か? とか、この名前を気に入ってる? なんて聞いてきたのか……
「君が娘だと分かって、おまけに孫の華ちゃんまで居て、嬉しかったけど、このことを君に伝えるべきか凄く迷ったよ。
今更、父親だなんて言ってもミーメちゃんは喜ばないんじゃないかって思ったからね。
だから『エデンの園』を暫く避けていた。でもね、やっぱりミーメちゃんに会いたくて……娘の顔が見たくて……
ひとりで華ちゃんを育てて苦労してる君の力になりたかった。そうしたら、彼氏が出来たって聞いて嫉妬したよ。ミーメちゃんがまた、遠くに行ってしまう様な気がしてね。
で、その相手には他に女が居て、子供まで……許せないと思った。愛しい娘を悲しませる男が憎いと思ったんだ」
膝がガクガクして、その震えが全身に広がっていく。
幼い時の父親の記憶がないから、私には初めて父親と会う感覚だった。
とっても優しくて、素敵な人だと思ってた人が……男性と意識したこともあった横田さんが父親だったなんて……
瞼を閉じ、大きく息を吐く。
「それでだ。沢村さん、改めて父親として聞く。ミーメちゃんを……娘をどうするつもりだ?」
銀がゆっくり顔を上げる。
「泣かせるつもりは……ありません」
「信用できないな」
「信用するかしないか、それは専務の自由です」
そう言うと銀はソファーの上の私の手を強く握った。
えっ……?
「俺は今から会議があるから先に社に戻る。神埼はもう暫くここに居るといい。せっかく父親と再会できたんだ。積もる話しもあるだろう……」
「銀……」
「君に娘は渡さない!」と怒鳴る横田さんに頭を下げ、銀は応接室を出て行った。
ドアが閉まると横田さんはすかさず私の隣に座り、涙声で「美衣芽…」と言って優しく微笑んだ。
「あ、あの、私……」
「突然のことで驚いたと思う。こんな形で言いたくはなかったが、どうしても彼のことが許せなくてね。すまない」
私に向かって頭を下げる横田さんを見て、これが父親の愛情なのかとなんとなく思った。
父親にとって、娘は特別……そんな話しを聞いてもピンとこなかった。でも、今なら、少し分かる気がする。