この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

なんで銀がここに居るの?


周りの大きな声援さえも聞こえなくなるくらい、私は驚き固まっていた。


すぐにでも銀に駆け寄りたい気持ちをグッと抑える。


誰も銀に気付いてない。横田さんも居るし、華が走り終わるのではこのままで……


でも、結納はどうしの? そんな大事な日に、なぜここに居るの?


「ミーメちゃん、華ちゃんが走るよ」


横田さんが私の腕を引っ張る。


「あ、うん」


白線の前に立ち、真剣な表情の華。


『よーい……ドン!!』


湧き上がる声援。おかまちゃん軍団が身を乗り出し腕を回す。ヒートアップしたおかまちゃんたちは、"女"であることを忘れ、完全に男に戻ってた。


ゲッ! パンツ丸見え……


「行けーっ! 華ちゃーん!」

「華ちゃん、ガンバー!」


ひとりの子と競い合いながら私たちの前を駆け抜けて行く華。そして、少しだけ華が前に出た。


ゴールまで後ちょっと。直線コースを残すだけ。誰もが華の一等を確信した……その時――


足がもつれた華が宙を舞い、地面に勢い良く落ちていく……


――ドサッ……


それはまるで、糸の切れた操り人形の様だった。成すすべなく地面を転がっていく華。そして、うつ伏せで倒れた華はピクリとも動かない。


目の前の状況に愕然とし、思わず大声で叫んでいた。


「は、はなぁーっ!!」


保育士さんが驚いて走り出す。私も慌てて立ち上がり、華の元へと行こうとした。でも……


「待て!」


私の腕を掴んだのは、銀だった。


「……銀」

「行くな!」

「何言ってってんの? 華が……華が……」


すると銀は保育士さんにも「ハナコに近づくな!」と怒鳴る。ビックリして立ち止まる保育士さん。


そして、ゆっくり歩き出した銀が運動場を突っ切り、ゴール前で立ち止まった。


銀、何をする気なの?


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