この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

今までの静寂は消え、保護者席を中心にザワめきだす。


まさか、銀……知ってたの?


でも、誰が銀にバラしたの? ふたりが親子ってこと知ってるのは、限られた人だけだ。それに、いったいいつからそのこと知ってたのよ?


親子だってことが分かったら、当然、私を問い詰めるとかするでしょ? なのに、銀は何も言ってこなかった……


私が運動場の真ん中で考え込んでいる間も、銀は華に「立て!」と叫んでいた。


「ハナコがここまで来て、ゴール出来たら、お前の望みを叶えてやる」

「ほ、ほんと?」

「俺は約束は守る!」


華の目の色が変わった。必死で立ち上がろうとしてる。


両膝は擦りむいて真っ赤に血が滲み、痛々しくて見てられない。


「華、もういいから……」


フラフラと立ち上がった華に駆け寄り、抱き上げようとした私を彼女はキッと睨み「来ないで!」と怒鳴る。そして、真っ直ぐ銀を見つめた。


「華……?」

「ミーメさんは、そこに居て! 華に触らないで!」


足を引きずり、歩くよりずっと遅いスピードで、一歩、また一歩と銀の待つゴールへと進んで行く。


どうしてなの?そんな怪我して痛いはずなのに……いつもだったら、ほんの少しの怪我でも大騒ぎして痛がるのに……華はなんの為に、そこまで頑張れるの?


幼く小さな華の背中が、なんだかとても大きく逞しく見えた。


華……


自然発生した手拍子。皆が華を応援してくれてる。子供たちからは、華に頑張れの声援が飛ぶ。


「いいぞ、ハナコ。もう少しだ」


保育士さんたちが慌ててゴールテープを張り、華が来るのを待ち構えている。


ゴールテープの後ろで銀がしゃがみ、笑顔で両手を広げると、テープを切った華がその腕の中に倒れる様に飛び込んで行く――


「パパーっ!」と叫びながら……


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