この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
副社長さんは部屋に入るなり、この異様な雰囲気を瞬時に感じ取った様で、露骨に顔をしかめた。
「銀之丞、どういうつもりだ。どうして身内だけのパーティーに、神埼さんが居る?」
銀が答えるより早く怜香さんが声を荒げた。
「お兄さん、銀之丞ったら、大変なことをしてくれたわよ。このふたり、勝手に入籍したらしいわ」
「な、なにぃ……?」
副社長さんは鬼みたいな怖い顔をして銀に詰め寄ると胸ぐらを掴む。
「お前ってヤツは……」
「俺の結婚だ。兄貴たちにとやかく言われる筋合いは無い! 一応、俺としては筋を通すつもりで報告してんだ。それでも俺とミーメのことを許して貰えないなら、俺は鳳来の家と縁を切る!」
「……貴様」
今にも銀を殴りそうな勢いの副社長さん。私は必死で副社長さんの腕にしがみ付き、叫ぶ。
「勝手に入籍したことは謝ります。ですから、乱暴はやめて下さい」
「神埼さん、銀之丞と別れる約束はどうなったんだ?」
「あ……」
「君はもっと利口な女性だと思ってたんだが……失望したよ」
「すみません……」
俯く私に、怜香さんが吐き捨てる様に言う。
「この泥棒ネコ! 銀之丞が社長の息子だと知って、手放すのが惜しくなったんでしょ! だから貧乏人は嫌なのよ!」
それを聞いた銀がキレた。
「怜香! おめぇーいい加減にしろよ! それ以上、ミーメをバカにしてみろ……たとえ姉貴でも許さねぇ。その綺麗な顔ボコボコにしてやるぞ!」
「銀之丞……なんてことを……」
ヤバい。このままだとホントに銀は何をするか分からない。危険だ。放心状態の社長さんは、ボーッと外を眺めていて頼りにならないし、どうしょう……と思ったその時、何やら異様な殺気を感じた。
背後から聞こえてくる女性の低い声。
「騒がしいわね。どうしたの?」