俺様編集者に翻弄されています!
 氷室の冷めた視線がチクチクと悠里を刺す。

「お前って、ほんとダサい女だな……」

「干物女ですから」

「威張るな、干しも干されてこの梅干女!」

「な……! そんなこと言ったって、いきなりアポ無しで女の部屋に来る方がよっぽどありえないと思いますけど?」


 悠里は氷室に触られたドラマCDを隠すように棚の奥へ押し込んだ。氷室はそんな悠里を見ながらニヤニヤと笑っている。


「い、いいんですよ! 別にお洒落していく場所も相手もないし! 小説書くのにそういうの必要ないですから! 干物女万歳!」 


「パジャマとか着ないわけ?」


「これは、パジャマ兼部屋着です」


 氷室はそのドヤ顔に額に手のひらを押し付けて首を振った。目の前の生き物が信じられないとでも言いたげに―――。


「そ、そういう氷室さんはどうなんですか? 疲れて帰ってきて着替えないまま寝るとかあるんじゃ――」


「あぁ、俺はどんなに疲れててもシャワーくらい浴びる」


 お前と一緒にすんな、と目で突き放された気分になって、悠里は不貞腐れた顔で口を尖らせていると、氷室が付け足すように言った。



「それに寝るときは裸だ、何も着ない」


「ぶっ!」


 悠里は思わず口に運んだお茶を噴き出しそうになって、口元を拭った。


「は、はははだ、裸っ!?」


 海外ドラマや映画で見る外人はいつも寝る時は裸なのを思い出して、アメリカンナイズされた氷室ならそれも必然だと思った。


「裸……イイですね」

 お色気効果音の「ワーオ」が何度も脳内再生される。


「ん? なんか言ったか?」


「いえいえいえ!!」


 悠里の脳裏に邪な妄想が沸き起こるのを必死で押さえ込み、首を振った。
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