俺様編集者に翻弄されています!
第七章 ベリーベリーラズベリー

Chapter1

 ついにこの日がやってきてしまった―――。

「はぁぁ……」


 悠里は憂鬱な面持ちで、恵比寿にあるグランドホテルに向かっていた。悠里の気持ちとは裏腹に、今日は皮肉なほど麗らかな陽気だった。



 なんとなく朝から落ち着かず、早起きをしてどの洋服を着ていこうか、髪型はどしようかとあれこれ悩んで、その間ずっと頭の片隅で氷室のことが離れなれず、原稿にも手がつかなかった。

妄想する時もいつも氷室のことを考え、執筆中にもついぼんやりと氷室のことを考えてしまう。


 悠里はこの感情を知らないわけではなかった。ただ気づかないふりをしているだけだった。



(だって、私と氷室さんの関係は単なる作家とその編集者……)


 抑えれば抑えるほど溢れ出るこの感情に、悠里は困惑していた。

(もう! 考えてもしょうがない! やめやめ!)

 悠里は自分にそう言い聞かせて、会場へと向かった。
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