俺様編集者に翻弄されています!
(氷室美岬さん、氷室さん……かな? いきなり美岬さんは馴れ馴れしいし……)

考えれば考えるほど膨張する妄想を抑えつつ、悠里は電車を乗り換えて空港まで約片道一時間かかる道のりを、車内で揺られながらまどろんでいた。


 結局、氷室についての詳細は履歴書以外わからなかった。けれど、加奈と北村は明らかに何か隠していると、悠里は勘ぐっていた。


 成田空港までの暇つぶしに本でも読もうと持ってきた室井慶次のミステリー小説も気が散って頭に入ってこない。


 室井慶次の小説は全て蔵書として家に保管してある。室井の書く小説に出会ってからこの道を選んだといっても過言ではない。

けれど、どんなにあがいても自分には納得いくようなミステリーは書けなかった。そう思うと、本当は自分に文才などないのではなかと時々考えては悩んでしまうのだった。
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