LOOOOP
会社を出て、数分。
場所は、たくさんの居酒屋が立ち並ぶ、俺のお気に入りスポット。
篠原に限らず、会社の人間とどこかへ飲みに行く…となれば、決まってこの場所。
ここなら2、3軒はハシゴできるし、飲み直しもきく。
社宅マンションからもそう遠くないし、帰りも比較的安心だ。
世界一立地条件のいい、絶好の飲み場だって、そう思ってたのに。
「…ねぇ、結城」
「おう」
「ここ、もうお店全部閉まってるよ」
悲しいかな。
商店街にいつもの活気はなく、景色は一面の真っ暗闇。
どうしてこんなに、神様は不公平なんだろうか。
唯一の俺の楽しみさえ、平気で奪って逃げていくなんて。
そんな心の中の叫びはもちろん、隣にいる篠原には聞こえない。
「仕方ねー。今日は諦めて、また今度にすっか。もう遅いし、送るよ」
落胆を表情に出さないように。
少し笑みを浮かべながらマンションの方へと、足を踏み出す。
出来るだけ、自然に。
本当は、喉から手が出るくらい、篠原と飲みたいって思ってる。
たくさん話して、もっと近づきたいって。
お前の1番が、俺にならねぇかなって。…
でも。
もし俺が、そんな心の内を、すぐに言動に移せるような人間なら。
今頃、こんな苦労などしていない訳で。
「…じゃあ、さ」
「?」
俺の思考を遮るかのように、すぐ後ろの彼女が口を開いた。