《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
★☆★
「先輩、金曜日だし〜どっかパーッと飲みに行きません?」
金曜日。帰り支度をしていたロッカー室。
久しぶりに合コンが無いという万里に明るく誘われた。
「いいね、行こう! 行こう」
近頃うっぷんがたまっていたから、私はノリノリで返事をした。
会社を出て、万里と歩きながら道沿いに植えられた桜の木を見上げた。
少しずつ蕾が膨らんでいる。
もう少ししたらお花見が出来るかも……
街灯に照らされている桜の木。
ビルの間に突然現れたように見える桜。
桜色のストールをふんわりと首に巻いてヒールの音を響かせて歩く。
気がつけば30歳手前になっている私。私は、この街に自分の居場所を見つけられただろうか?
鹿児島から上京し、初めて見上げた都会の空。青い空にそびえるように立つ沢山のビル群。ビルがあまりに多いので閉口してしまったあの日。
初めての一人暮らしに浮かれたり、戸惑った20代前半の私。
都会で私なりに必死だった。周りから置いて行かれないように、浮かないように上手く馴染めるようにって。
今でもそうだ。
方言が出ないように気をつけて、ダサいと思われないように雑誌を買いあさり、ファッションにもそれなりに気を配ってきた。
万里に腕を引かれ、桜の木を振り返りながら歩く。
コツコツとヒールの音がアスファルトの地面に響いていた。
少しは私もこの街に馴染めたんだろうか?