《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
「けどさ、仕方ないだろ? 俺のひと目ぼれした女はさ〜、朝、皆が忙しく通り過ぎるだけの会社の前の歩道でボーっと呑気に桜の木を見上げてるような女だったんだから」
「はい?」
「落ちてきた桜の花びらを手にして、気持ち悪いくらいニンマリ笑ってるような女」
「気持ち悪い? それで一目惚れ? ないない。それにさ、桜の花ってまだ咲いてないよね」
私の顔を見つめて三浦は、なんだかとても赤くなっている。
困ったような怒ったような、そんな複雑な顔。
「当たり前だろ。去年の話なんだから」
口を尖らせて言う三浦の顔は、もっと赤くなってきていた。
「去年?」
意味がわからない。私は三浦の顔を食い入るように見た。