《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』


だから、毎年。

桜の木の下で朝早くきて、ぼーーと見てた。



花が散る頃は風に吹かれて舞い落ちる花びらに取り巻かれて空を仰いだ。



鹿児島にある実家から車で10分程の場所に24時間営業のホームセンターがある。自動車免許を取ってから初めて自分で運転して行ったのが、そのホームセンターだった。助手席には緊張した顔の父さんを乗せていた。

そこに行くまでに通る道から田んぼ越しに、なかなか見事な枝っぷりで、毎年見応えのある花を咲かせてくれる桜が見える。
その桜を運転席から初めて見て、なんとなくだけれど、やっと大人になれた気がしたものだ。

『父さん、見て。桜ん花、きれかね〜』

『今は見んでよか! 前見ろ、前を』
眉間にシワを寄せる父さんの左手は、窓の上についている取っ手をしっかり握りしめていたっけ。



春には、いろんな思い出があって桜を見ながら、いろんな人を思い出していた。



今の会社に就職が決まり、住む所も決め上京する私を空港まで送ってくれた両親。
父さんの運転する白い軽自動車に乗って空港へ来る途中で見た桜は、いつになく濃いピンク色で枝いっぱいに咲いていた。

私の新しい門出をお祝いしてくれているようだと思った。


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