《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』


手をのばして隣に座る三浦くんの手を握った。大きくて節くれだった男の人の手。


「三浦……くん、ありがと。思い出したよ、いろんな事。東京に出てきたら、やりたかった事とか行きたかった所とかまだまだ、たくさんあったなって」

最近は疲れたとかいう理由から、休みの日にどっかへ行こうとか何かをしようとか考える余裕も無く、ただ毎日を緩慢に過ごしてきた。



「へえ、そうなんだ。良かったらさ……」
ためらいがちな三浦くんの表情。


嘘みたい、これも三浦くんの本当の顔?
ためらって自信無さそうな弱々しい顔。


そんな表情の三浦くんを見ていて、言ってあげたくなった。

私なんか貴方より年上なのに、まだまだ自信もなくてふらついているし、万里に比べたら女子力も少ないし、ダメダメの女なんだよって。
私もあなたと同じだよ。
一生懸命バランスをとりながら、なんとか毎日生きてるんだよって。

でも、教えない。

そんな事教えたら『なんだ、そうなの? 早く言えよ』ってすぐに調子に乗ってしまいそうな気がするから。
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