《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
恋をしたら綺麗になれるなんて嘘だ。
自分のマンションへトボトボと帰りながら、大きく肩を落とした。
空気の抜けかけた風船みたいだった。飛べもせずに地面をすーっと漂う風船。
髪の毛を手でバサバサっと散らしてみた。
こんなの私じゃない。
こんなに悪い方へばかり考えたり、疑い深い女じゃない。もっと、ドライでさばけた女だ。歳も歳だし、大人な女のはずだ。ほれたはれたで簡単に振り回されないはず。
ふと、目に付いた美容室『from』。通るたびに前から気になっていた。チェーン展開している有名な店ではないが、1000円カットという看板を堂々と掲げているお店だ。
まだ、店の中には明かりが点いていた。
腕時計を見ると時間は20時55分。
店の前に立ち止まって、ドアに描いてある営業時間を確認してみた。
AM9:00~PM18:00。
全然過ぎている。
ため息をついて立ち去ろうとした時に、美容室『from』のガラスの扉が開いた。
出てきたのは、白いシャツの似合うアシンメトリーなショートヘア、いかにも青山のオシャレ美容室にいそうなタイプの男性だった。