《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
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自己紹介の時に初めの人が年齢を言ってしまい、それに習うように全員が年齢を言った。
それだけ、ここにいる全員が年齢を言うことになんの抵抗もないほど若いということだ。
私は、年齢をはっきりとは言わなかったのだが、このメンバー内で一番年上なのは誰が見ても明らかだった。
男子陣は某有名商社に勤める、いわゆる商社マンってことだった。
なんでも、うちの会社と同じ恵比寿駅に支社があるらしい。つまり、今回の合コンは駅つながりだろうか。
でも、駅が一緒だからってだけで合コンにまで話がつながらないだろうし。
そんなことを考えながら、青くさい枝豆をつまみ生中をあおる。
一番奥に座っている男子陣のリーダー格の益岡(ますおか)さんが、ベラベラと聞いてもないのに中腰になりながら、今日の合コンが開かれたきっかけを楽しそうに身振り手振りを入れて話し始めた。
きっかけは、やはり駅だった。
恵比寿駅でうちの社の美人受付嬢である田宮(たみや)さんに天パーの益岡さんが一目惚れしたようだ。意を決して駅のホームで声をかけ名刺まで渡したらしい。
益岡さんという人は、天パーで見るからに何か面白そうなことを言ってくれそうな風貌をしている。
言ってはなんだがあの外見で、田宮さんみたいなモデル級の美人に、良く声をかけられたものだと感心してしまう。
私が益岡さんの立場なら、きっと俺ごとき人間が声をかけるなんて無謀極まりないよなって考えると思う。
二人で会うのは無理だったものの、こうして合コンまでこぎつけた益岡さんの不屈の精神に拍手を贈りたい。
ふっと、枝豆を口にしながら、斜め前に目をやる。
そこにはイケメンでもなくブサメンでもなく、ごくありきたりでどこといって特徴のない顔が特徴のないありふれた体についているのが見える。
で、目の前のごくごく普通の男は、吉田(よしだ)さんと言うらしい。やはり、名前も特徴がない。
吉田さんはシャンディガフとか言う洒落てるのかそうでもないのかわからない飲み物を注文していた。
ビールをジンジャーエールで割った邪道な飲み物だ。それをちびちびと飲んでいる。
「でさ、万里ちゃんは休日とか何してんの?」
まるで、さっきしてた話の続きだけどさというような話っぷりだが、吉田さんが万里に話しかけた場面は一度も見ていない。
平凡な吉田さんは完全に万里へ体を向けて話しかけている。
末席に座る私のことは、御構い無しだ。
別にいいんですよ。話しかけたい人に話かければ。ただ、始まってすぐのあからさまな一人狙いの攻撃は、大人なんだから正直よしてもらいたい。
気が乗らなくても初っぱなくらいは、笑顔でみんなと話すべきだと私は思う。そうでなければ、気分が悪い。
いくら平凡な男にでも無視される状況は、はっきり言って痛い。痛すぎる。