《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
「ああ、これ返す」

殺虫剤をわたしに返すと「じゃあ、もういいや」と犬を追い払うみたいに掌をしっしっと動かす三浦。


私は犬か!は? ふざけんな!
何が「もういいや」なんだか?!

ふるふると震え始まる私の体。

怒りで震える私の体を上から下まで眺めて笑い出す三浦。
「しかし、なんだよ。くくっ! その格好、休みでどっこもいかないからって女を怠けんなよ。ジャージってなんだよ、ジャージって。これから走りこみにでもいくのかよ」

ジャージ。

好んでジャージで来たわけじゃない。緊急事態だといそがされたから仕方なく……。誰が急がせたんだっつうの!

顔面がかあっと熱くなった私。
「あんたね、休みの日に人を走らせないでよ! しかもゴキブリ退治の為って! 何考えてるの!」

「どうせ、走るのに適した格好してるしさ、丁度良かったんじゃねーの? それにさ、なんの為に呼んだんなら怒らなかったんだよ」

「それは」

「もしかして、あんた」

玄関に殺虫剤を持って立ち尽くすジャージ姿の女に、無駄に顔の整った男が近づいて来ていた。

ずんずんと追い込み漁みたいに近づいてきた三浦は、ドアまで追い込んだ私の顔を探るように見てきた。

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