《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
はいはい、わかりましたよ。
『この男じゃ満足できないから先に帰りましょうよー』と言うのが太ももを相手に見えないように突いてくる万里のサイン。
「あ、なんだか酔いがまわったかも」
少し大きめの声で私ごときが、ぼやいても斜め前の吉田さんは完全に無視だった。
この野郎、大人だったら少しは気をつかえないのかなぁ?
私は吉田さんをじっと見つめた。けれど、吉田さんは私と目が合うのを避けたいのか急にお通しをつつき出した。
せめて『大丈夫ですか? あんまり飲んでなかったみたいなのにお酒弱いんですね』とか。
ひと言くらいあってもいいと思う。こんな感じで、よく一流会社に入れたものだ。
空になったジョッキを振り回しても、『次、何のみます?』とも言ってこない。
頭に来るのを通り越して、そこまで無視できる吉田さんに感心していた。
相当な意地悪か大物だよ、この人。
ジョッキをテーブルに置いて、世間という荒波の中で自分が置かれている状況をまざまざと見せ付けられた気がした。
29歳の平凡なOLは、合コンという恋愛相手を探す席では、一切必要のない存在で眼中にも入らない、そういうことだ。