憧れ~大切な君へ~
小5の冬
あの日はとても寒い日だった…
3月だというのに珍しく雪が降っていた。

『龍~!涼ちゃ~ん!雪だるま作ろ~!!』

家中に恵梨の声が響き渡った。

恵梨が言う“涼ちゃん”とは
俺の兄ちゃんの事だ。
名前は、田上 涼(タガミ リョウ)
俺らより6つ年上で17歳。
俺は兄ちゃんの事が好きだ!
もちろん兄弟として!
そして俺が尊敬する人、第1位が兄ちゃんだ!

『恵梨、朝っぱらからウルサい!!!』
『龍…何言ってんの!?もぅお昼なんだけど…大丈夫?』
『うゎ…マジだ…
兄ちゃん!もぅ13時!間に合う?』
『うゎ…ヤバッ!!』
兄ちゃんは凄いスピードで2階から下りて来た。
『涼ちゃん、どっか行くの?』
『あぁ!』
『彼女とデートだとよ!』
『龍、余計な事言うな!』
『はいはい!行ってらっしゃい!』
『おぉ!行って来る!龍也、恵梨香、仲良くな!』
『涼ちゃんこそ彼女さんと仲良くね!』
『はいよ!じゃ2人共またな!』
兄ちゃんは、そう言って笑顔で出かけて行った…

それは俺らが見た兄ちゃんの最後の笑顔だった…

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