柔き肌に睦言を
睦美がテーブルに突っ伏すような姿勢を取ると、修二はその後ろから幾分腰を落としながら覆い被さるように抱いた。上下いや左右、いや斜め四十五℃というのが一番しっくりくるか。その角度で修二の腰は動きに動いた。
「あっ、はあっ、やぁん」
テーブルのギシギシと睦美の喘ぎが重なる。
わたしの目はもう先ほどからある一点を凝視してしまって、自分でもどうにもならないほどだった。テーブルと制服のブラウスの間で見え隠れする睦美のむき出しの胸だ。なんという豊かさ、なんという白さ。ゴヤの裸のマハも、ボッティチェリのヴィーナスも足元にも及ばないであろう、圧倒的な美しさだ。
「修二、くん、いや、あ、もっと」
「睦美ちゃんかわいい。かわいいよ」
修二が後ろから突き上げるたびに、白く柔らかい脂肪がふるふると揺れる。睦美の全身は総じて柔らかいそれらに覆われていて、女性の魅力の全てはそこにあるのだと私は悟った。絵画の中の裸婦たちは、まさにそれを画家の筆によって描き尽くされているがゆえに、あんなにも満たされた表情をしているのだ。
そしてひょろりとしてメリハリの無い体型の私が絵画の裸婦にしろ睦美にしろ、豊かな体に魅せられてしまうのは必然なのだ。しかしいま目にしている豊かな体の何より確かな誘惑は、それが動いているということだ。快楽に震えているということだ。
あんな風に目の前で弾まれたら、どんな男でも、いや男でなくともたまらないだろう。現に私は自分が女であることを忘れていた。自分の両足の間の付け根に、存在しないはずのものがあって、それが求めている気がするのだった。
私の狂気を肯定するかのように、修二の興奮状態もまたすごかった。
男というものは誰しも、事に及んではこのようなのだろうか。なんで、と思うほどに必死だった。額の汗が、ここからでも見て取れる。
「睦美ちゃん、っオレ、もう」
そしていっそう力の入った激しい、いわゆるピストン運動のあと、修二は何やら小さくうめいて、急に動きを止めた。
「ごめん。もう、いっちゃった」
申し訳なさそうだった。
「え、やだもっと。もっとして」
「いやごめん、今日は、もう。また、えーと、土曜日」
息が上がっている。
「わかった。またいっぱいしてね」
そういった睦美が乱れた髪に手ぐしを通しながらこちらを向きそうになって、私はやっと我に返った。
私はとっさにその場にしゃがんだ。そしてゆっくり、ああでもできるだけ速く、横移動して部室棟の脇に逃れることに成功したのだった。
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