隣に座っていいですか?
「本音を言えば、子供は邪魔だけど……紀之さんを手に入れるには仕方ない話でしょう」

何て言った?
子供が邪魔?

「前の奥さんの子供なんてね。でもきちんと育てるつもりです。後ろ指さされたくないですもん」

「桜ちゃんは可愛いです」
声が震えてくる。

「えぇ可愛いですよ。だけども私と紀之さんの邪魔はさせません。だって新婚さんなんですもの」

お母さんと恵子おばさんの会話がやっと見えてきた。

「あなたねぇ」
頭に血が上り
立ち上がって大きな声を出す寸前

「いくちゃん!」

桜ちゃんがリビングの扉を開き、私に駆け寄って抱きついてきた。

「桜ちゃん」

「いくちゃん。あいたかったです。さくらはいくちゃんにあいたかったです」
半分泣きそうな顔で私に強く抱きつく。

私も会いたかったよーって言う前に、冷たく厳しい声が響く。

「桜。手は洗った?うがいした?」

スッと立ち上がり
婚約者は腕を組んで桜ちゃんの背中に回る。

桜ちゃんは首を横に振り、私から離れない。

「お父様に言いますよ。お外のばい菌を家の中に入れてはいけません。早く手を洗ってらっしゃい。時間がないわよ。あと1時間で英語のレッスンなのだから」

英語?

「早くなさい」
鋭い声に桜ちゃんは私から手を下ろし、すごすごと洗面台へ行ってしまった。

「言い方がキツイでしょう」
文句を言うと

「他人にどうこう言われる必要はないわ」

ぴしゃりと言われ
私は何も言えなくなってしまった。
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