隣に座っていいですか?

部屋が綺麗だ。

床も見えるし
台所も綺麗そうにしている。
婚約者が現れて
ホットプレート三昧の生活から脱出できたのだろう。

「紀之さんと桜がお世話になってます」
上から目線に感じるのは
きっと私の根性が曲がっているから?

入れてもらったコーヒーはやけに苦く、酸味が多かった。

「行きつけの店の豆です。紀之さんの好きな味なので」

味音痴かへタレ?
一杯19円のブルックスの方が美味しいぞ。
でも大人だから言わない。

「何も世話してませんけど」

「紀之さんがそう言ってました」
嬉しそうに言う。

あぁ
そうですか。

妙にイライラするわ
上がって失敗。早く帰ろう。

「心配だったんです。いくら不動産王の息子さんといっても、やっぱり子連れでしょう。お話をもらった時は嫌だったけど、この素敵な家と紀之さんを見て、すぐOKしました」

「不動産王?」
なんだそれ?

「ご存じない?」
口の端がうっすら上がる。
顔が綺麗なだけあって
この仕草は嫌味だなぁ。

「紀之さんのお父様は、誰もが知ってる不動産チェーンの社長なんですよ」

「え?」

「翻訳家なんてしてますが、かなりの財産を持ってますので、そちらの役員手当などもらえば遊んで暮らせます」

「亡くなった奥さんのお家が、お金持ちとは聞きましたが」

「それ以上」
こっそりと教えてくれた。

あのへタレは
金持ちのボンボンだったか。

どうも浮世離れしていると思ったら。
そうなんだ。



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