隣に座っていいですか?

「いやー邪魔なんだけどー」
悲しみに打たれる私の横を、大きなお尻が動いている。

「今度は何さ?」
目の前に座りお母さんは
聞き込み開始するけど
私はもう抜け殻です。

「……殴ってきた」
それだけ言ってまた沈む。

「誰を?」

「へタレ」

「女じゃなくて?」

「うん」

「なんで?」

誘導尋問が上手いなぁ
カツ丼なくても
犯人は全て語ってしまう

いや
『身体の相性』発言は言えなかったけど

「桜ちゃんが、かわいそうだよ」
鼻水をすすりながら訴えるけど、返事はない。

どうして?
テーブルから顔を離し
お母さんの顔を見ると「やれやれ」って椅子から下りる。

「ひどい話だけれど、あんたには発言権はありません」

似たような事
達也にも前に言われたな。

「どんな女だろうと、隣の男が決めた女でしょう」

グサッとくる。

「買い出し頼むね」
そんな言葉を残し
お母さんはそのまま外へ行ってしまった。

って……おいっ!
また隣に報告かいっ!

明日には
町内に広まりそうだな。

「郁美」
頑固親父に名前を呼ばれる。

「何?」

「謝って来い」

「どうして?」

「暴力は暴力だ」

静かに諭され
溜め息しか出ない。





< 134 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop