隣に座っていいですか?

どんな女でも
田辺さんが決めた女性。

沈んだまま
仕事に没頭し
壁の時計を見る。

午後9時

向いのおばさん情報によれば
田辺さんの婚約者は豪邸に泊まっているわけではなく、午後8時頃には帰るらしい。

もう帰ったか。

のれんを下げ
玄関先を出たり入ったり
ウロウロと熊みたいだな私。

「行くなら行け!」

「ぎゃっ!」
久し振りにお父さんに気合を入れられ、私は夏の夜風に追い出された。

夏の終わり
もう
星座は秋の空。

ゆっくり足を動かし
近すぎる豪邸を見上げるだけで、前に進めない私。

「お出迎えか?」
スーツ姿の男に声をかけられた。

「おかえり達也」
苦笑いでお出迎えすると

「ちょっと歩くか?」

さりげなく
肩を動かし
私を近くの公園へと誘導。

私は素直に彼の後ろを歩いていた。

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